縁あって、国立劇場で行われている歌舞伎教室へ行った。
「教室」と言っても、後半は本格的な歌舞伎の一幕が演じられるので、かなりお得な舞台である。
前半は歌舞伎の歴史や、歌舞伎の所作・言葉などを楽しく解説してくれた。
解説の澤村宋之助氏が登場し話をはじめてしばらくすると、突然舞台が真っ暗になり「停電です!」の声。数秒してぱっと明かりがつくと、衝立の絵の中から出雲阿国が抜け出してきている趣向。
何も知らない私のような観客にも楽しめる演出である。
出雲阿国という女性が始めた歌舞伎が、現代では男しか演じられない芸能になっている。絵の中から抜け出した出雲阿国は女形の支度部屋を見せられてびっくりしてみせたりする。
今回後半で演じられる演目が「芦屋道満大内鏡」より「葛の葉」という、女形が主役を演じる数少ない歌舞伎なので、こういう解説にしたのだろう。女形の所作しぐさの造り方というのもよくわかった。
※女性らしい歩き方のためにはひざの内側をぴったりくっつけて歩く。そのために、膝の間に紙を挟んで歩く練習をしたりもするのだそうだ。
後半。
主人公の「葛の葉」は、白狐の化身。
命を助けてくれた安倍保名(あべのやすな)⇒(※最近映画にもなった陰陽師安倍晴明(あべのせいめい)の父)、と所帯をもっていたが、正体を知られて、子供を残して去っていくという話である。
※こんな解説もありました
http://www.koalanet.ne.jp/~jawa/kabuki/enmoku/asiyadouman.html見所は別れの歌を障子に墨書するシーン。
「恋しくばたずね来てみよ和泉なる
信太の森のうらみ葛の葉」
中村芝雀の演ずる葛の葉も良かったが、プログラムを見ていて、安倍保名を演じる中村種太郎が若干19歳の役者だと知って興味を持った。舞台を見ていても、まったく遜色なく自信を持って演じているように見えた。ううむ、歌舞伎はまだまだ安泰です。
面白いだけでなく、こうしてどんどん有望な若手が現れていくのだから。