2007年にエッフェル塔の近くにオープンした美術館。
今年パリで一番話題を集めた美術館はここだろう。
シラク大統領の強い指導の下、ルーブルなどが所蔵していた非西欧文化の品々を展示するための場所として開館したのだ。西欧文明以外のものへの敬意を表す為の展示だったわけだが、実際開館してみると賞賛と共に大きなブーイングも起こった。
朝日新聞の記事によると、
「アフリカ、オセアニア、アメリカ、これらをひと括りにして同じ空間に押し込めている事自体が、シラクに代表される「エセ西欧主義」の愚劣な本質を露呈している。」
などと批判されたそうだ。
開館と同時に大きな賞賛と批判に直面したのは、いったいどんな展示なのか?これは自分自身が見て判断するしかない。
そう思ったので、自分の為に使える時間が出来たら、今年是非いっておきたい美術館だったのである。
建築はこの通りとてもおもしろい。
今をときめくジャン・ヌーベルの設計。突き出した箱それぞれが小展示室になっている。こうして写真だけを見ると、この建物はパリに不似合いな意表を突く奇抜な外観に見えるだろう。
しかし、実際セーヌ河畔を歩いてもこの美術館をすぐに発見するのは難しいほど目立たなく造られている。うまくガラスの障壁を設けたりして、この建物の凶暴さがパリにあふれ出ないように造られている。これはその場所に足を運んでみて始めて分かった。
建物全体は単純なバラックのような構造になっていて、ひとつの大きな空間である。地球上の地域別展示に、一応はなっている。しかし、展示物にひかれて気ままに足を進めるといつのまにかアメリカからアジアに行っていたりした。なるほど、「いっしょくたに押し込んでいる」という批判があるのは、こういった展示についてだったのだ。
朝日新聞の「奇想遺産」でとりあげられていた時に、建築家の隈研吾氏が書いていた言葉を以下に引用しておきたい。
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突き詰めると「美術館とは何か」という大問題にぶち当たる。何かを愛し、持ち帰り、閉じ込めるのが美術館の本質だとすれば、全ての美術館は差別、制圧、略奪の為の悪魔的装置ということになる。美術館とは天使の家か、悪魔の館か。西欧と非西欧は結局どうつきあえばいいのか。問いは深まるばかりだ。