上野で開催中の「フィラデルフィア美術館展」に行った。
今回の展覧会、開館は朝9時と早い。
混みあわないうちに行きたいと思ってはいたが、着いたのはもう9時半をまわっていた。もう人でいっぱいか・・・と思ったのだが、行列はまったくなく、拍子抜けするぐらい人が少なかった。多くの人が「美術館の開館は10時」と思い込んでいるのだろうか。
今回は前売り券を持っていない。
窓口で正規料金で入場券を購入。
すると「正規料金で入場の方、先着○○名様へクリスマスプレゼント!」と貼紙してあるのが目に入った。
そんなにたいしたものくれるわけないよね。
期待せずに行くと、この写真の「フィラデルフィア」というチョコレートか、フィラデルフィア美術館のタンブラーのどちらかを選ばせてくれた。
早起きはフィラデルフィア・チョコレートの得、でした。
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フィラデルフィアは昨年アメリカ東海岸の《手造りの旅》を企画した時に、泣く泣くカットした都市である。ニューヨークから南へ2時間。アメリカ合衆国発祥の地。独立宣言の時鳴らされた「自由の鐘」がある町。クエーカー教徒ウィリアム・ペンにちなんだペンシルバニア州の州都。全米第五位の大都市。
美術好きにとっては、バーンズ・コレクション、フィラデルフィア美術館の町。日本庭園に建つ「松風荘」にはかつて横山大観の襖絵があった。今年山種美術館で公開された千住博氏の「滝」の連作が、今年から大観の作品のあった場所に置かれているときいている。
見たいものがたくさんある町である。
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展覧会の77点の作品は確かにレベルが高かった。
以下にいろいろな作品への自分なりの寸評をば。
宣伝ポスターにとりあげられていたルノワールの「ルグラン嬢の肖像」は、その実物の前に立つと、印刷ではとても伝わらない色の繊細さが分かる。
ルノワールのもう一点の肖像画は、妻アリーヌのもの。オルセーにある「田舎のダンス」のモデルとしての顔は知っていたが、こちらの日常の肖像の方が親しげに描かれていた。
セザンヌが奥さんの「顔」をちゃんと描いている絵を始めてみた。モデルに長時間の忍耐を求めたセザンヌは奥さんをモデルにしている絵が多いが、そのどれもが顔をちゃんと描いていない。
もともと顔など描こうと思っていないのだから仕方ない。
ま、今回一枚だけでも「顔」を描いた絵があってよかった(笑)。
マネの描く時事絵画というのもおもしろい。「キアサージ号とアラバマ号の海戦」は、1864年アメリカ南北戦争で実際にあったニュースを描いている。
ドガの踊り子のブロンズもあった。オルセーにほとんどおなじものがある。ブロンズは百年たってもそうそう朽ちてはいかないけれど、チュチュの部分は布製なのでもうまっくろでぼろぼろになってしまっている。こういうのは新しいものにはかえられないんでしょうかねぇ。
ブーダンの作品二点。
いつもの、空を画面の7割にもとる構図であった。数年前に日本で開催された「ブーダン展」ではたくさんの大作があったが、それらはオルセーにもオンフルールのブーダン美術館にも見あたらない。いったいどこにあるのだろう?
名前を知らなかったがホアキン・ソローリャという人の描く海辺で遊ぶ子供達のつるつるした肌感覚がとてもいきいきしていた。当時アメリカで大人気で個展も開かれたというのも分かる。覚えておこう。
マルセル・デュシャンが父親を描いたポートレートがあった。「泉」だけじゃないんですね。ちゃんと描けるんだ(笑)。