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モロー美術館
2007-10-22
パリ徒歩観光の一日。
朝、9時半にヴァンドーム広場近くのホテルを出て、気持ちの良い青空の下チュイルリー公園を歩き、オランジェリー美術館へ。午前中は団体予約客のみの入場なのでゆっくり見学できる。

今日は始めほかに誰もおらず、我々十人だけで空気も真新しく感じられるほど。いつもの行列してわさわさした雰囲気の中で見るのとは、同じ絵でも違って感じられる。

同じ絵がいつも同じように感じられるとは限らない。ガイドさんのお話ききながら回っている中で今日はじめてその価値が「わかった」と思えたのはセザンヌの描いたリンゴの絵であった。

今まで理解できていなかったものが、ある日ふっと理解できた気がする事がある。そんな瞬間であった。

コンコルド広場からシャンゼリゼをグラン・パレまで歩き、地下鉄でジャックマール・アンドレイ美術館へ。ここについては以前私が書いた下記をお読みいただくと幸いです。
http://www.nta.co.jp/ryoko/tourcon/2004/040415/

素晴らしいこの美術館には人気のカフェが併設されていて、そこで昼食を食べようと考えていた。しかし、問題は予約が出来ないこと。パリの友人が先に行ってがんばって席を押さえていてくれたおかげで、行列を尻目にさっと席につくことが出来た。

巨大なキッシュとデザートのケーキを食べてから館内の見学。ジャックマール・アンドレイ美術館のような場所を案内することは、日本語のガイドさんではほとんどないのでしょうなぁ、苦労させてすみませんね(笑)。前出の記事を書いたときに小松が調べたことがけっこう役に立った。

**
ウォーキング・ツアー、パリの美術館梯子の最後は「ギュスターブ・モロー美術館」。この写真の美しい階段がある。ここは美術館というよりも、モローのアトリエと自宅そのものである。

彼が生きているうちから、彼の意志により死後の公開を念頭に置いた改築を施された。玄関を入ると、生活スペースであった一階を抜け、細い階段を登ってフロア全体がアトリエになった空間に到達する。そこはいまだにモローが徘徊しているような雰囲気がある。外光がほとんど入ってこない空間には百年前の空気がよどんでいるかのようだ。

壁全面を埋めつくす絵の主題は神話。セレメ、ガラテア、オフルェウスなどなど。中でも有名なのは「出現」と題された、サロメの前の空中にヨハネの首が浮かび上がっている絵だろう。いくつものバージョンがあり、その創作過程が見えてくる。

モローは自分の絵を売って生活をする必要はなかった。だから絵は散逸せずこのような形で独特の世界を保つことが可能となった。モローのスタイルがそれほど好きでない人にも、とにかくも印象に残ることは間違いない場所である。

ただし、行かれる前に神話の予習はお忘れなく(笑)。

***

モローの館中で、私が一番印象に残るのは、実はこのアトリエではない。中二階の小さな一室に集められた品々である。秘めたる恋人アレクサンドリーヌへ贈った品を、彼女の死後ひきとって納めていた場所である。

生涯結婚せず、母親と住んでいたモローに、彼女のような存在があったことは、長く知られていなかったそうだ。しかし、アレクサンドリーヌの存在はモローにとって小さいものでなく、彼女の死の時期、モローの描く人物から顔が消えていたという同時性も指摘できるのだという。




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