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塩谷哲 Sketch of NY
2007-10-12
オーチャードホールで行われたピアノの塩谷哲が中心になって行った二日間の企画ライブを見た。

ウッドベース、ドラムス、パーカッション。
サックス、トランペット、サックス。
それにバイオリン1,2,ビオラ、チェロがWで二人ずつ加わる編成。

個性的なゲストが三人入る。
溝口 肇(Cello)、上妻宏光(津軽三味線)、手嶌 葵(Vocal)

まずはゲスト三人とそれぞれ数曲一緒にやる。

溝口肇はだいぶ前にタバコの宣伝に出ていたのを覚えている。
「世界の車窓から」のテーマ曲も手がけている。

※20年も続く「世界の車窓から」だが、短い番組の中で曲が流れているのはオープニングとエンディングをあわせても22秒しかない。なので番組が始まって十年目になるまで曲にはなっておらず、番組で流れる部分しかなかったそうだ。今はフルコーラスになりCDも売り出している。

最初はピアノとチェロのデュオ。
それからスティングのEnglish man in NYをカバーした。
元曲のメランコリーな雰囲気もあってムードがあった。

若き日には溝口氏もNYへいわば武者修行に行き、ライブハウスでチェロ3台のなにも打ち合わせをしないセッションをやったりしたと話していた。だれにもそういう時代があって、模索した先に譲れない自分というのを見つけていくのかもしれない。

彼のチェロは蒼く深い水の底から浮かび上がってくる様な音を奏でていた。
チェロの音というのがそうなのか、彼の音が特別なのかは分からない。でも、ヨー・ヨー・マの音はそんな感じを受けない。こんなチェロの音は聞いたことがなかった。

「ゲド戦記」での鮮烈なデビューで有名になった手嶌 葵(Vocal)は20歳、まだニューヨークには行ったことはないそうだ。しかし、小さい頃からサッチモ、エラなどを好きだったそうで、JAZZのスタンダードを歌うのは楽しそうであった。

一曲目にジョージ・ガーシュインのGeorge GershwinのSomeone to watch over meをピアノ一台の伴奏で。
とても好きな曲だったし、控えめな歌声も歌詞世界とよく合っていてひきこまれた。

※いつもそうなのだが、インストロメンタルな演奏会に突然歌声が入ってくると、それまでの演奏がかなりすばらしくても確実に歌に「持っていかれて」しまうのである。歌の力・人の声というのはすごい。歌がうまくないのを自覚している自分としてはとてもうらやましい。

二曲目にサッチモのWhat a wonderful world。
これはこれでよかったが歌のスケール感を歌いきるのにはまだ少し若いかもしれないと思った。これから成長していく彼女が自分でほんとうに歌いたいと切望するのはどんな音楽なのだろうか。


津軽三味線の上妻宏光は始めて聞いた。
彼もまたNYのライブハウスへ三味線で突撃していった経歴があると話していた。和楽器というのはいろいろな意味で西洋楽器より制約があるように思うが、その特性を味方につけ、個性にしてしまえれば、充分に普遍性・国際性を獲得できる。要はどんな楽器だろうと弾き手しだいなのである。

最後にこれらゲストが加わり4部構成のNY組曲が披露された。
作曲科出身の人らしい構成。変拍子たっぷりでかわっている。


こういう曲のほうが大型ホールのお行儀良い観客向けにはよいのかもしれない。塩谷氏本人もドビュッシーみたいなピアノも弾いていたし。

しかし、個人的には二部のはじめにやってきた曲のように、シンプルな構成で楽器がアドリブでどんどんスイングしていくようなものをもっと聞きたい。ライブハウスのような小さな場所でまた聞いてみたい、そんなピアノであった。



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