ギリシャへ行く前という事で、ギリシャ劇を見る機会を得た。
アイスキュロス作、紀元前5世紀に初演された悲劇三部作の最後を飾る作品。これは数あるトロイ戦争の後日譚のひとつである。
トロイ戦争やギリシャの神々の話を、日本人にとっての「ももたろう」や「うらしまたろう」のように聞いて育ったギリシャ人や欧米人には、このエウメニデスを見るための素養がすでにある。しかし、一般的日本人にはどうだろう?
掘り起こし検証される三つの殺人。
論争する神々。
デルフィ、アルゴス
アテナイ、アッティカ
こういった都市、地域名。
ぱっと見ややこしく遠い話だ。
しかし、時代や世界が違っても人間の深層にある本質はかわらないから、2千5百年前に書かれた悲劇が現代でもおなじテーマとして充分通用している。風雪に耐えた強い作品だと思った。現代にも充分通じる問題を提起できている。
アイスキュロス、すごい。
今まで知識としてこの劇作家の名前は頭にあったが、いかに名前を残されるべき人だったのか、はじめて実感する事ができた。こういったひとつひとつの体験が異文化に近づいていくステップになる。
そうだ、ギリシャがまた少しは近くなった。
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観客席はたったの百席ほど
舞台は四角に設置された客席に囲まれている。
マイクなど使わなくて俳優の生声でしっかり伝わる広さである。表情ももちろん恐いほど迫ってくる。劇場は大きくない方が良い。
音楽はエレキ・ベースたった一本だけが使われていた。
これがし〜んとした舞台でもまったくノイズを発生させず、シンプルだがとても良い音を響かせてくれた。このノイズがないというのは案外大事な事だ。
そして、ベースで最も大事なの音色なのだ。そういう事にもいまさらながら気づいた。