ヨーロッパの九寨溝(誰が言ったか)、プリビッチェ国立公園。石灰土壌で浄化された水が地上に湧き出し、階段状に湖を形成している。大小十六もの湖と九十以上の滝の中に木道が通されていて、そこを二時間ほど歩いた。
木道がとおっているルートは多分最もすぐれた景観を楽しめるルートなのだろう。ただ自然のあるところへ足を運んでもこれほどの景色を見られるとは限らない。それだけ整備された国立公園なのである。
水はすきとおり、倒木が石灰化していっている様もはっきり見える。それぞれの湖すべてに、「うじゃうじゃ」と形容したくなるほど魚がいた。
しかし、こんなに魚が多くなったのは、気候の変化による事なのだそうだ。
「実はここはむかし針葉樹がもっと多い森だったのよ」
なるほど、ここは標高が450m〜600mになる。冬はかなり寒くなる場所だから針葉樹の森であってもおかしくない。
「それが近年は落葉樹が主流になって落ち葉が増え、それがバクテリア、プランクトンを増やし、それを食べる魚が増えたわけ」
なるほど、自然公園といっても、世界遺産といっても、人間の意図で全て昔の通りに保全出来るというわけではない。