朝5時過ぎに外へ出ると、薄蒼い空にきのうとおなじマッターホルンが圧倒的な迫力で立ち上がっていた。
そのまま日の出を待つ。
右下のツェルマットの谷はまだ夜。ホテルの明かりがぽつぽつ灯っているのが見下ろせる。目をずっと上に上げると山並みの向こうに太陽の光が射しはじめた。
風は無いが寒さはだんだん染みてきくる。
カメラを持つ手がかじかんでくるが、刻々かわってゆくその景色から目が離せない。
6時を過ぎ。
ようやくマッターホルンの先端が赤くなりはじめた。
より高いモンテローザはもう少し光が多く当たっている。
その光がだんだんと下へ降りてゆく様を楽しむ。
いったい何回シャッターを切っただろう、そのうち何枚がこの空気を伝える事ができるのだろう。
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ツェルマットから登山電車で30分上がったリッフェルベルグはマッターホルンが最も美しく見える場所だろう。ここには1858年にリッフェルベルグホテルが出来ていた。登山電車開通のはるか前である。
ここに泊まるのはもちろんマッターホルンの絶景を楽しむためだが、天気によっては全く何も見えなくて、寒さに震えるだけで終わってしまう可能性もあった。今回、賭けに勝った気分です。