赤ちゃんポストの設置の適不適が論争になっている日本だが、よく考えてみると15世紀末のイタリアでそれはすでにあった。
フィレンツェの捨て子養育院がそれである。大聖堂から徒歩十五分かからない。ミケランジェロのダビデ像のあるアカデミア美術館からそう遠くない広場がここ。
連続するアーチの間につけられた青いメダルに白い布で下半身を巻かれた赤ちゃん達が描かれているのが分かるだろうか。
壁に回転台が取り付けられていて、そこに赤ちゃんをおいてくるっと回し、身元がわからないように置いていけるようになっている。壁の中は病院ではなく教会が運営する「捨て子養育院」である。現代の日本では宗教がそういった役割を果たす事はあまり期待できないので病院がその立場になったのだろう。
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新聞にも載っていたがこういう公共捨て子装置というものは、なんと12世紀にも法皇勅令で設置さていたのだそうだ。
捨て子の是非は言うに及ばない。それは時代がいつであっても同じ。
また、世界がどんなに豊かになろうとも難しい事情で生まれてくる子供たちが存在する事も同じ。
「捨て子を助長するような設備はいかがかと思います」というコメントを出す首相もあるようだけれど、現実の世界の難しさを知っている人ならば、現実的な解決策を考えようとする「宗教」や「医療」の現場の緊急避難的解決策を否定は出来ないと思う。