紀元1世紀に建設されたポン・デュ・ガールは古代ローマの建設したこの手のものの中でも特に目を驚かせる。その規模、美しさ、周りに何もない川に突然出現する立地。
ユゼスの泉からニームの町まで50kmもの長さで浄水道を引き、その水道管に川をまたがせる為に作られたのがこの橋なわけだ。三段のアーチになっているが、最上部がその水道管。かつてはこの内部も自由に歩かせてくれたが、今は特別に予約してガイドを雇わないと入る事が出来ない。今回の旅の大きな楽しみのひとつとなる。
水道管は大人一人が立って歩けるほどの高さである。石でふたがされていたものがなくなってしまっている箇所から顔を出す事もできる。50mもの高さがあるから覗くとけっこうコワイ。
水が流れていた高さまで石が厚くなっているのが写真でも分かるだろう。実はこれは水に含まれていたカルシウムが付着していったものだそうだ。一年で2mmほど厚くなっていったとの事。まるで動脈硬化の血管のようである。
この水道橋は古今の建築家の間では巡礼地のようになっていた。中世の職人修行や工房のいわば修学旅行の目的地。彼らが訪問記念に刻んだ名前の後がいたるところに見られる。最後のものはなんと1989年。世界遺産に指定されてからはこの慣習も禁止されてしまった。