アルベロベッロからポリニャーノ・ア・マーレの町まではほんの30分ほどで着いてしまう。今日の移動はこれだけ。ホテルでゆっくりして崖の上につくられた美しい旧市街を歩き、おいしく食べるのが目的の一日である。
ポリニャーノの町に着いたのはまだ午前10時半前。しかし、まだ閑散期なのでホテルは半分の部屋だけ出してくれた。ありがたい。少し休憩してから街へ歩き出す。アドリア海に突き出した崖の上につくられた旧市街はそれを見るためにだけでも来る価値がある。
我々のホテルコボ・ディ・サラチェニはこの旧市街をすぐ外から見る絶好の位置に建っている。部屋のベランダから海の上の崖に生えたような建物が見える。この町に泊まるならここです。
市街へはアーチ型の橋を渡っていく。我々の渡っている橋の下にもっとがっしりした一重アーチの古そうな橋が見えてきた。後で資料を調べたところ、なんとこれがトライアヌスが整備した古代ローマ紀元後2世紀始めのものだそうだ。トライアヌスはアッピア街道に新しいルートを付け加えたが、この街はその通り道にあたっている。海岸ちかくには当時の道も発掘されている。
旧市街はたいへん面白かったが。また別の機会に書く。
この街へゆっくり滞在する大きな理由が、崖のどてっ腹にできた自然洞窟を利用した有名レストランである。この写真は一度見たら誰でも忘れられないものだろう。私も一度来てみたいと思っていた。
しかし、ここは夏のあいだしかオープンしていない。今日はまだちょっとだけ早いのである。しかぁし!今回お願いしていた地元ガイドのコニーさんが尽力してくださっていた。
レストランのマネジャーが仰々しくカギをもって現れると、あれあれ?レストランを出て旧市街の広場の方へ向かっていく。不思議に思いながらもついていくと、何気ない古い扉にそのカギを差し込んで言った。「ONLY FOR YOU!」。
古く暗い階段を下りていくと、ポリニャーノ貴族の持ち物であったとかかれた石のプレートが壁にはめ込まれている。急な階段を降りきると、いきなり断崖の下の海が目の前にひろがった。すごい!こんな入口があったのか。ただレストランの階段を下りていく何倍も効果的な入場である。
さらに海沿いのゆるい階段を下りていくと広いスペースが見える。そこに白いテーブルクロスみえた(写真でもみえております)。
地元ガイドのコニーさん、わざわざ昼食の前にこの場所を開けてくれるように予約してくれていただけでなく、我々の為だけにスプマンテをあけてアペリティフの時間を楽しむ段取りまでしてくれていたのだった。
これはほんとに得がたい機会である。団体できても、個人で来ても、こういう体験はそう出来るものではない。歴史あるこういった場所を自分達の為だけに開けてもらえて、贅沢な時間を味わえる。今回の《手作り》苦労して企画した甲斐があったと思える瞬間であった。手配に協力してくださった皆さんほんとうにありがとうございます。私を含めた11人、よい旅をさせていただきました。