朝、カプリを出発し、ソレント⇒ポジターノ⇒アマルフィ⇒ナポリと移動した日であった。ソレントでは(あることだが)荷物運搬車が来なかったりでたいへんだったが、そんなことは書かない。ここでは自分にとってのナポリの印象が変わってきた事を書く。
**
「ナポリを見てから死ね」という諺がある程に、ナポリは美しい街・・・であったそうだ。これは多分19世紀、まだ車のない時代に上流階級の人々の見ていたナポリの事なのだろう。
現代の我々の眼から見て、ナポリがこれを見なくては死ねないと思うほどのものには、正直思えない。
特にローマから日帰りでやってきたのでは、印象は最悪となるだろう。ナポリの汚い町並みとひるがえる洗濯物を見るだけ。ガイドさんに「危ないのでこのあたりには下車していただけません」と言われ、サファリパークを走るバスに乗っているように市街を案内される。パリのようなパッと見に美しい街ならばそれでも魅力の片鱗は伝わるだろう。しかし、ナポリのパッと見はどうみても芳しくない。私も、そう思っていた。
しかし、今回はナポリに二泊する。時間も比較的余裕がある。今日も夕食はプレジビート広場の近く、この写真のウンベルト一世ガラリアがある近くになっている。「よし、ここを見てもらおう」少々不安はあったけれど、「歩いてこそ魅力が分かる」という事を実感していただく為にも、あえて30分ほどの散策時間をとる事にした。
夕暮れていく半円の広場と元王宮。オペラの殿堂サン・カルロ。そしてこのガラスと鉄の丸ドームをいただくガラリア。文句なく美しい。このドームの下に立って見上げる事があるかないかで、この街を訪れる人の印象は全く違ったものになるだろう。それが私の目的である。
時間の短い訪問ではあればこそ、型にはまった定番場所ばかりを案内するのではなく、滞在している時間帯や見てもらう相手の事を考え、それに合ったものを見てもらおう。そうすれば、美しきナポリは、私の目の前にある。