山頭火の松山での生涯最後の一年をあたたかく遇した高橋一洵という人がいる。この人について書かれた「一洵がゆく」という本(金本房夫著・青葉図書)を松山でいただいた。いや、松山だからいただけた、のだろう。首都圏の書店では見かけなくても、正岡子規記念館では売っているのである。
山頭火について興味のある人が手に取ろうとする他、それほどたくさんの人の興味をひく本ではないだろう。平成三年に出版され、平成八年に第二版となっている。
使われている漢字はかなり難しい。さっとは読めない漢字がたくさんある。文体もはっきりいって古い感じがする。現代の小説のようにさささっと読み進めるものではないのである。
内容はしかし、非常に丁寧に人の心のうち追った書き方をしている。じっくり読めばゆっくり染みてくる、そういった「つけもの」のような味わいとでも言おうか。
こういう味わいは分かりやすい「スナック菓子」の味になれた若手には受けないのだろうなぁ…。
ネット書店のアマゾンでは、この本は検索しても出てこなかった。こういう地味で古臭いと思われがちな本は相手にしていないのだろうか。しかし、こういう売れにくいけれど良い本というのこそ、ネットの力で流通させていくべきなのだけれど。
※古本屋ネットワークで一冊発見しました。