クイーンズタウンからクライストチャーチへのバス移動。グレートサイトツアーの混乗バスにて十時間以上の長旅である。
我々のグループだけでなく、日本の他社J社やK社のグループも一緒のバスに乗り込む。日本でどの旅行会社に申し込んでいたかというのは、この際関係なし。外国人も多い。十年前なら添乗員の同行するツアーをこういった混載のバスに載せる事は考えられなかった。これだけツアーの安売り競争が激しさを増す中、「背に腹はかえられない」ということなのだろう。
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ドライバーは運転しながら英語のガイドもしている。日本人は各座席に装備されたオーディオシステムからヘッドフォンを通じて日本語ガイドの説明を聞く。山の多い南島は、丘をこえて違う町にいくと気候もかわるし違う個性の町が待っているが、それもそういったガイディングを受けてはじめてわかること。説明をちゃんと聞くというのは大切ですね。
途中、フルーツ栽培の盛んなクロムウェルの町で停車。場所柄フルーツマーケットになっている。ここで長らく探していたこの新型キウイをついに見つけ、食べる事が出来た。
品名はKIWI BERRYと書かれている。以前私が調べた頃にはBABY KIWIという名前だった筈だ。まだ市場で確定した名前がないのかもしれない。大きさは小指ぐらいの大きさ。とても柔らかくて皮ごと齧って食べる。これだけ柔らかいと収穫する人はかなり丁寧にしなければいたんでしまいそうなほど。
断面もあの緑色をして小さな種もあるので確かにキウイだが、甘みはもっとしっかりしており、贅沢な感じがする。ううん、なるほどこれなら高く売れるのでは、と思わせる。ここではこのパックひとつで5ドル(約450円)で売られていた。
KIWIはもともと中国原産でNZにはなかった。英語では旧名チャイニーズ・ベリーと呼ばれていたそうだ。このへんの話について以前書いた文を下記に再録。
***キウイフルーツのふるさとは?***
「このキウイはイタリア産じゃないか。」とアメリカ人観光客がクレームしたそうな。2003年NZ(ニュージーランド)産キウイフルーツが不作で、クイーンズタウンからマウントクックへ行く途中にある、観光客がいつも停車する果実即売所では、ついにイタリア産の輸入キウイを置いていたのだった。
「NZへ来たのだから、代表的果物キウイフルーツを食べたいなぁ」と思って買ってみたら、イタリア産と表示されていたというのでは、ちょっと文句も言いたくなる。でも、実はキウイフルーツが中国原産の果実だという事はあまり知られていない。
1904年、NZからの視察団が中国から持ち込み、品種改良した。実際1960年代まではNZでもチャイニーズ・グース・ベリーという名前の果物として流通していた。
果肉がきれいな緑色ということで人気が出たが、時代は東西冷戦の真只中。お得意先のアメリカで売ろうとしたときに「チャイニーズ○○」という名前では、それだけで拒否反応が出て売れない。そこでNZ固有の鳥キウイに似ているという事で、新しい名前をキウイ・フルーツと付けた。案外新しい名前なのだ。
この話をしたら、「そりゃ、似ているのが日本にもありますよ、『さるなし(猿梨)』というやつで、山で採れます。」とおっしゃる方がある。
皮をむかずにそのまま食べる事が出来、キウイに似た味わいがあるという事だ。
http://www.to-be-kobo.com/saru.html辞書にも確かにそんなやつがのっておりました。
「シナサルナシ」これはもちろん日本語名で、中国では猕猴桃(ミーホウタオ )と呼ばれるのが一般的だということだ。ううん、今度中国へ行ったら探してみよう。
それに目を付けたのか、陝西省周至県にてイギリス企業が「KIWIの里」プロジェクトに着手し年間4万トン生産を目指しているという記事もネットに載っていた。そのうち中国産のキウイが「元祖」として台頭してくるやもしれません。
NZ発で人気が出たキウイだが、今では生産国は世界にひろまっている。
イタリアへは1970年代に持ち込まれ、ローマの南ラティーナ地方の土が中国の原産地方の土に似ている事が分かり急速に生産量が拡大した。
現在ヨーロッパではイタリアやギリシャで精力的に栽培されており、裏付け資料は見つからなかったので定かではないが、イタリアが生産量いちばんになった時もあったと言う話をきいた。NZは今も生産大国ではあるが、全体の30%程度のシェアを握っているにすぎない。
簡単に外国に真似されてしまった元祖キウイの改良品種として、最近は「ゴールデンキウィ」が元気である。これは林檎とキウイを掛け合わせてつくったもので、甘くておいしい。NZでは日本で買うのより格段に安くて美味。長期の滞在中には毎朝食べておりました。
http://komatsusin.hopto.org/koma/modules/iDiary/★世界の写真からNZの項目
ベイビー・キウイという品種も最近売れ出しているそうだ。NZでは品種改良の新しいものとして出ているらしいが、これはどうやらもともとの猿梨にちかい様に見える。
http://www1.ttv.ne.jp/~kiwi/cultivar-babykiwi.htmlいろいろ改良した結果いちばん元の形に近づいているのも面白い。
オレゴンやチリで盛んに生産されていて、NZは2002年では10軒ほどの農家しか作っていなかった。こうなると、キウイはもうNZのものではない。名前をキウイと付けておいたおかげでNZのイメージ商品になっただけなのだ。
キウイだけでなく、NZの農業というのはここ20年ぐらいで大きく比率を変えている。
いちばんに我々のイメージに浮かぶのは羊毛。しかし、これはどんどんその数を減らしている。70年代最盛期には羊の数も九千五百万頭を越え、一億頭まで届くかと思われたが、今は四千万頭程度になっている。
この最大の原因は宗主国イギリスがNZから羊毛を輸入しなくなった事である。EUという経済ブロックに加入したイギリスは、羊毛の国としてつくりあげたオーストラリアとNZを、ついに切り離さざるを得なかったということだ。
これにより、牧羊地はどんどん別の目的に変えられている。ワイン、鹿、駝鳥がその代表格。付加価値高く売れる産物に切り替えることが重要なのである。特に鹿は角が中国、韓国で漢方薬として珍重され、肉は全世界高く売れるということである。
ドイツなど今でも冬に狩が盛んに行われている国では、この時期のレストランの高級な肉はベニソン(鹿肉)となる。 「やっぱりドイツの森の鹿はおいしいねぇ」などと言いながら、実はNZ産の鹿肉を食べているドイツ人がいるだろう事は予想がつきますねぇ(笑)。
イタリア産のキウイをNZ人が食べ、NZ産の鹿肉をドイツ人が食べる。
グローバル農業とは便利なのか不自然なのか、微妙です。