昨夜、ブリュッセルの自由食の時、数人の方とご一緒した。中のおひとりが、ウィンドーで見つけて「あ!」と思った古本を手に入れたと言って見せてくれた。それは「Y0UPI」というワンちゃんが主人公の絵本であった。
子供の頃に日本語版が出ていて、それを読んだ記憶があるのだという。長い年月を経ても、主人公以外の登場人物の名前もちゃんと記憶しているほど気に入っていたそうな。そんな自分のお気に入りの絵本が旅先ベルギーのウィンドーに飾られているのを見たら、だれだった足が止まるだろう。とても素敵な旅の瞬間である。
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誰もが「自分だけの旅」をみつけたいと思っている。それは「優雅に過ごす素敵なホテル」だったり「ちょっと知らないおいしい料理」だったり、「有名でないけれど気に入った絵」だったりする。
しかし、本質的な意味で「自分だけの旅」というのは、行った先で突然に与えられるものではない。多くの場合、それはすでに自分の中に存在したものの再発見なのだ。
それぞれの人の中にはいろんな記憶が詰め込まれている。子供の頃のそれは、多くは自分ではきづかないうちに周りから注入されている。こういった要素は長い時間の中でゆっくりと熟成されていく。
こういったものがあるいはひとの「底力」となるのかもしれない。今回のケースでは、旅する「底力」には確実になった。ベルギーの古本屋でこういう出会いが出来たその人は「自分だけの旅」に出会ったということだ。とても素敵だ。「自分だけの旅」というのは、すでに自分の中にある。
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本日はブリュッセル空港からアムステルダム経由で日本へ帰国の途についた一日。