これ!この夜景を見たくてシエナの旧市街にホテルを指定したのだ。シエナのカンポ広場の夜景を見たければ、どうしても城壁内に宿泊しなくてはね。
こういった時間。旧市街をそぞろ歩く時間こそが町が自分の中に染みてくる。旅の最も印象に残る時間になるのだと思う。
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朝、ローマを出発し昼過ぎにシエナのホテルに到着。幸い部屋に入れたので荷物を置いてさっそく歩き始める。
昼食はカンポ広場で適当に買ってかじってもらう。車の入ってこない傾斜したレンガ?の広場は座り込んでサンドイッチをかじるにはもってこい。今日からは夕食にがっちりおいしいものを選んで食べてもらう予定でだから、ひるはごく軽くにして飢えてもらおう(笑)。
14時過ぎ。カンポ広場にあるガイアの噴水前で、現地の数少ない日本人ライセンスガイドYさんとミート。今回も日本から直接お願いした。
一般的なツアーでシエナ観光というと、入場は大聖堂だけだし、徒歩観光をよくとっても1時間というところ。やっぱりこれではとても足りない。
今回は洗礼堂に大聖堂博物館、ドメニコ教会にも入ってもらう。(プブリコ宮殿など、もちろんもっともっと見所はあるのですが、きりがない)
それに、大聖堂の地下から近年見つかった地下聖堂を追加。ここは大聖堂の床を支える為に瓦礫でうめつくされていたのだが、それを取り除いてみると、ドゥッチョ以前のマエストロの手によるフレスコ画が、保存状態よく発見された。昨年より公開されている。一見の価値がある。
大聖堂博物館で一番見てもらいたかったのは、ドゥッチョ(チマブーエ工房でジョットの兄弟弟子といわれる)の代表作「マエスタ=荘厳の聖母」。この中世的な祭壇は以前は大聖堂の主祭壇であったそうな。しかし、後年ばらばらにされて売り飛ばされたりして散逸していた。それらを出来るだけ集めて展示している、けっこう大きな複合作品である。
このすばらしさは実物を見なければ決して伝わらない。私自身昨年ナマで見てはじめてどっか〜んっと心にキタ。布の金糸のこまやかな描写、表情や皮膚感。印刷物になってしまっては絶対ゼッタイ再現できない。また、図録は大きさを再現できるはずもない。
現代で人気の出る美術とは、つまり印刷してもその良さが比較的伝わる作品でしかないという事を実感する。
ドゥッチョの「マエスタ」は構図をみればビザンチン美術的、遠近法も未熟でルネサンスのような軽快さはない。しかし、それを含めて魅力にしてしまうオーラがこの作品本体にはある。それは印刷やPCのディスプレーではゼッタイ伝わらないのだ。
大聖堂博物館に入ってもらった理由はもうひとつある。
ここからは大聖堂を拡大する予定で造られて断念された壁の上に登る事ができるから。マンジャの塔だけでなく、ここからもシエナの旧市街を俯瞰する素晴らしい景色を楽しめる。
一度ホテルにもどり夕食は19時半頃から。
昨年行ったレストランにYさんから予約をいれてもらった。この地方でしか食べられないシエナ豚に再会するのも、シエナの旧市街に泊まっていればこそのことである。