今回、パリの★★★レストラン、凱旋門近く「T」のつく有名店へ行った。
写真は「お二人様から」の注文が可能な「ブールの鶏」まる一羽を目の前で切り分けてくれているところ。
ブールの鶏とは、フランス中部にあるブール・エン・ブレスで飼育される高級鶏肉で、高級ワインと同じくAOCを受けている程のもの。なかなか食べられない代物なので、注文してみたのだ。
ケージではなくて野原で育てられる。一羽について必ず確保するべき広さが決められている。駆け回ってのびのびと育った健康な鶏さんを、出荷する一週間前〔だったと記憶する)に突然身動きできないケージの中に閉じ込める。食欲は変わらないから、肉の上に脂身がつく。これがうまみとなるという。人間は自分の食欲の為にはどんなふうにも動物を育てる。
私は昔むかぁし、こういうレアものだと知らずにブールの町で昼食にこの鶏を食べた記憶があった。今になって知らずに食べていた事が非常にくやしかったので、今回はちゃんと意識してこいつを食べようと思ったわけである。
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この「T」のつくレストラン、けっこう緊張して行ったのだが、わりに楽しくリラックスさせて過ごさせてくれた。その理由は、考えるにオーナ自らが出てきて、フロア係りにあれこれを指示をする細やかさにあったように思う。
スタッフを目の前で叱ったりせず、にこやかに、でしゃばらず。
服装もとても地味。信頼できる温厚な初老のおじさんというかんじ。有名レストランのオーナーという肩書きからは遠い外見が逆に効果的。彼がいかに大事に店の雰囲気をまもっているのかが感じられた。
いちばん店を大事に思っているのは、もちろんその持ち主でなくてはならない。その人の目の届く範囲で仕事が回っているうちは、絶対信頼がおけるよい店であり続けるだろう。
仕事というのは、ただ拡大すればよいというものでなないのである。