ローマの大統領官邸であるクイリナーレ宮殿。
2006年3月18日〜6月25日まで、表題の画家の展覧会をやっている。
彼の作品は、多分全部で50点もないだろう。
そのうえイタリアのみならず世界中にちらばっている。これらを集めて展覧会を開催できるのは、イタリア以外では考えられない事だ。
だから、この展覧会が開催されていると聞いた時、どうしてみ見ておきたいと思った。
今日は月曜日だが幸いこういった展覧会はOPEN。しかも午後8時までやっている(金曜と土曜は夜10時まで!)。
アントネッロ・ダ・メッシーナは15世紀イタリアにカンバス画をもたらした画家といわれている。
彼はフランドルへ行き、(年代的にはありえないのだが)ヤン・ファン・エイクに教えをうけたという伝説がある。実際にはファン・エイクの工房を引き継いだ弟子に学んだようだ。
15世紀という時代に、イタリアから遥かフランドルまで旅をしたのは、いったいどのような理由だったのか?それを知るよしはないが、とにかく結果的に彼はイタリアに新技術をもたらした。
帰国後ベネチアに滞在した時には、ほぼ同年輩のベッリーニと親交を結び、影響しあったと思われる。
そういえば、ベネチアのフラーリ教会にあるベッリーニ作の聖母子の祭壇画は、フランドル的な細密画手法を感じさせる。
一目見て後の時代のラファエロやレオナルドのようではなく、一種硬い感じを受ける画面。やはりフランドルのファン・エイクやメムルンクの流れをくんでいるのが見てとれる。
こういった画法の話が多く取り上げられる事の多いアントネロ・ダ・メッシーナだが、この写真の聖母マリアはアイデアが卓越している。
「受胎告知」というと、天使がマリアに語りかけている図柄が一般的だが、ここではその天使ガブリエルの視点からマリアを見つめて描いているのである。画面に天使ガブリエルが登場しない「受胎告知」。こんな作品は後の時代になっても、ほとんど描かれてはいない。
今回世界中から集められた彼の作品を見て思ったのは、なによりも肖像画家として素晴らしい作品を残しているという事。そういった彼ならではの「受胎告知」だという事だ。マリアのトレードマークである青色のベールをかぶってはいるが、丸い光が頭にあるわけでもなく、これは実際上だれかの肖像画なのかもしれない。
※この作品は通常シチリア島はパレルモの美術館にありますが、ツアーの行程中にはなかなか見に行く時間がありません。