この小さな美術館で「アール・ブリュット」と呼ばれる展覧会が開かれている事を知ったのは、「福祉ネットワーク」というNHKの番組でだった。
表題はフランス語で、日本語に訳すと「生の芸術」となる。
いわゆる美術をやる人ではない人の作品、そしてどこか心に欠落を抱えた人が、テクニックを超えて描いた作品のことを指している。
半世紀前には「精神異常者の芸術」として扱われていたものだ。
多くの感じる事があったので、内容については別に書きたいと思う。
ここでは、こういった展示を1991年以来地道に、ずっと継続的に紹介してきた資生堂の姿勢に感謝したい。これがなければ、私も知ることが出来なかったものだから。
気持ちの入った「ごあいさつ」文が¥800円と求めやすい価格の薄い図録(写真参照)の初めに載っている。
「ほとばしるエネルギー、小手先のテクニックを吹き飛ばす力強さ、自己完結しながら凛と立つ潔さといった感覚を味わう事ができる筈です」
この言葉には展覧会を企画した人の、慎ましいがしっかりした自負が感じられて好ましい。
※一方で、この文の末尾には「株式会社 資生堂 企業文化部」という部署名しか書かれていない。誰の個人名をも出さないというのは、意図的なものなのだろうか?
あくまで組織としてこういった企画をしているという文章スタイルはとても日本的に感じた。良くも悪しくもね。