「もうねなくちゃ・・」と思っているうちに25時をまわり、音楽の為に流していたFMでは「ラジオ深夜便」という番組がはじまっていた。

そこで音楽ではなく朗読が始まると、ぐぐっと耳がそちらへ引き寄せられていった。

角田光代さんの短編。自分が学生時代に古本屋で売った本に、ネパールへ旅して再会するという「旅する本」という話。

よく選ばれた言葉で書き綴られている。
「すごいなぁ、上手に言葉を選んでいるなぁ。」
言葉を綴ることを職業としている人というのは、こういうレベルの文章をつむぎだすのだ。近頃誰でもが、私でも、日常的に文章を公共の場にこうして書くことが出来る時代になっているが、本当の文章家には、とても適わないと思い知った気がした。

質のよい短編の上手な朗読を、静まりかえった夜中に聴く時間は、ある種読書よりも心をなごませてくれます。でも、同時に自分の限界を知らしめてもくれました。