今回突然の出発にあたり、一冊の本のかわりに一本の映画でも、せめて見ていきたいと思った。
そして借りて出発日の午前2時までかかって見終えたのが「ガンジー」であった。一度テレビでやった時に、なんとなく見ていたけれど何にも分っていなかった。そのことがよくわかった。
188分という長さではあったが、眠くなることなく、しっかり見ることが出来た。
実はこういう映像での事前擦り込みというのが、ずっとその国の印象を決めたりするのだ。だから、ガンジーの火葬された場所にはどうしても行っておきたかった。
騒々しいデリー市内のなかで、広大な芝生のある公園になった一角にガンジーの火葬された場所「ラージ・ガート」はある。ヒンズー教徒の彼には墓はないので、ここが皆のお参りの場所になっている。
黒い大理石には、撃たれたガンジーが「おお、神よ」とつぶやいた、最後の言葉が刻んである。
現在のインドのどの紙幣にも肖像のある彼の生き方は、そう誰にも真似はできない、「強力な」善意に満ちている。
非暴力を民衆に説くガンジーは言う。
「彼らはあなたを殴るだろう。抵抗しないあなたを叩きのめし、そしてついには、あなたの屍を手にするだろう。しかし、奴らは絶対にあなたの服従や尊厳は手にすることが出来ないのだ。」
まさにそのようにして、インドは1947年独立を勝ち取った。
ただ、そのとほうもない「善意」が、百年後のインドの為になっていくのか?
彼のような民主的な指導者ではなく、どこかの国のコミュニストのような強権を発動するタイプのカリスマのほうが、百年後のインドの為にはよかったのではないか?
私は時に、そんな皮肉な思いをもってしまうのだけれど…。