昔の名刺を整理していたら、こんなのが出てきた。
この店では、名刺だけでなくいたるところに鶏が誇らしく掲げてあったのを覚えいている。
あの時には「このお店のご自慢料理なんだなぁ」ぐらいにしか思っていなかった。もちろんメニューは鶏だったが「ん、おいしいなぁ」程度でさらっと食べてしまったのだった。食物に今ほど関心を持っていなかった。
それは、実にもったいない事だった。
実はこのブールの町の鶏というのは、フランスでも屈指のAOC食品なのだ。AOCとは生産地限定呼称、ワインによく用いられるが、フランスではオリーブオイルや、こういった肉類の優れたものにまで認定が認められる。
ブールの鶏はケージでは育てられない、屋外で一羽に決められた広さの飼育面積があてがわれ、餌の質も制限される。そうして厳しく育てられた鶏だけがブールの鶏というブランドになって出荷される。
フランス国内でも、このブールの鶏肉とノルマンディーのプレ・サレ子羊肉はそう簡単に口に入らない。
この地方は観光でなかなか行く機会ない。
あの十年程前には、たまたま視察でディジョンからジュネーブに行く途上、昼食場所になっただけである。
ああ、あの時それを知っていればなぁ。
またこれから行く機会が巡ってくるでしょうか…。