ハンガリーに入り、ドナウが曲がる所（ドナウベンド）にある、ハンガリー教会のトップ、エステルゴム大聖堂に行く。

ここで私がぜひ知ってほしいと思うのは、地下に眠る反共の闘士ミンセンティ枢機卿のことである。

1956年のハンガリー動乱でアメリカ大使館に逃げ込み、辛くも生き延びた彼は、ウィーンに脱出してからも、ずっと社会主義ハンガリー体制の批判を止めなかった。

しかし、彼の寿命は社会主義体制の崩壊までもたなかった。
70年代半ばにウィーン近郊で、「ハンガリーが本当に自由になったら、私はハンガリーに戻してくれ」と遺言し、亡くなったのだった。
1993年になり、やっと彼はこの大聖堂に改葬されている。

せっかくきたのならば、大聖堂の外環や内装だけでなく、教会の中にある、こういった心に少しでも気がついてほしいと願っている。