この写真、写っている人が全員ローラースケートをはいているのにご注目下さい。
**
成田を出発しパリ乗継で19時45分トゥールーズの空港到着。まだ夕焼けの明るさであった。ホテルは旧市街の中心、18世紀の市庁舎と赤レンガの建物にかこまれたカピトル広場にあるクラウン・プラザ。赤レンガ造りの建物が多いので「バラ色の町」と呼ばれるのがよく分かる。 今日は週末でカフェもにぎわっている。荷物を置いてすぐに周りを歩いてみる事にする。ホテルの場所が良いと短い時間でも有効に使える。
下調べをしていた時に「市がイニシアチブをとって自転車やローラースケートで町を走る催しをやっている」とあったので、このローラースケートの集団を見たとき、すぐにピンときた。それにしても、走り出す時間帯が夜の9時を過ぎてからというのは…さすがラテンの国です(笑)。
***
トゥールーズはミディ・ピレネーの中心都市。近年人口が増えて42万5千人。パリ、マルセイユ、リヨンに次ぎフランスで第4番目となっているとか。このうち4分の1の11万五千人程が学生。エア・バスの本社や工場もあり、いわば技術者と学生の町である。フランスもパリだけでなく地方に元気な町があるのがよい。
町を流れているのはボルドーから大西洋に注ぐガロンヌ川。それにこの川を地中海と繋げるために掘られた運河(このうち「ミディ運河」は世界遺産指定)。この運河が大西洋と地中海をつなぐ最初の人工水路となった。巨木となったマロニエの茂る運河沿いの道は心地良さそう。
***
ホテルから北へ10分ほど歩くとこの町の中心教会であるサン・セルナンに着く。サン・セルナンは紀元250年頃この町で殉教した司教。牛に引き回す処刑であったといわれている。石があまり取れない場所なのでガロンヌ川の底から取れる赤い粘土を使ったレンガで建設されている。ミシュランの記載には最初の建設部分には石も使われていると出ていたので探してみた。が、それは実はこの聖堂の前にあった墓の石を流用していたものらしい。
ライトアップされた8角形の鐘楼とロマネスクのポーチとタンパンが美しい。
*****
サン・セルナン教会にかつてあった修道院と回廊はフランス革命で破壊されてしまっている。しかし、それら13世紀以前の柱頭ロマネスク彫刻がアウグスティン美術館に展示されていると調べがついていた。翌日午前、半日観光中の1時間の自由時間を使ってガイドさんにお願いし希望者を連れて行ってもらう事にする。幸いガイドしてくださったKさんもロマネスク彫刻けっこうお好きのようす。こういうのは案内していただく方によって印象も変わってくるものだから、今日は「運がよかった」です。(嗜好の合ったガイドさんには「運」じゃなくてお会いできるようにお願いしなくちゃね)
アウグスティン美術館はその名のとおり元修道院の建物で、ここにも回廊がある。そこではガーゴイユの一団が愉快な顔をして行列していて(笑)ユーモラスである。かなり大きな美術館で、他にも立ち止まりたくなる部屋がいくつもあったけれど、直行でロマネスクの部屋へ。
足を交差させたスタイルがおもしろい女性像など写真で見知っていた作品の他にも、ひと目みて吸い寄せられる美しいロマネスクの逸品が一部屋にぎっしり集められていた。特に「アレキサンドリアのマリア(?よく分からないのです)のストーリーが刻まれた柱頭彫刻を解説してもらうことが出来て価値ある訪問となった。簡潔なフォルムは、ルネサンスの華美よりも時に精神性を感じさせる美しさを発する。
短い時間ではあったが、この美術館訪問によって、私の中でトゥールーズの町の株はぐっと上がることになった。